大腸がんに対する<少量Cisplatin・5-FU>療法の5-FU持続静注を対照としたランダム化比較試験
研究報告書要旨
本研究は,根治切除不能・再発進行大腸がん症例に対する5-fluorouracil(5-FU)持続静注+低用量cisplatin(CDDP)療法の治療効果を,5-FU持続静注単独療法と比較した多施設共同ランダム化比較臨床試験である。
本研究では,登録症例をランダム化してA群(5-FU持続静注+低用量CDDP)およびB群(5-FU持続静注)の2群に割付けた。A群およびB群ともに,5-FUは埋没リザーバーより中心静脈カテーテルを介して300mg/m2/24hrの投与量でday 1-5の5日間持続投与され,day 6,day 7の2日間休薬し,これが12週間続けられた。さらにA群ではCDDPを最初の2週間は入院してday 1-5に3mg/m2/1hrの投与量で投与され,あとの10週間は基本的には外来でday 1,day 4に7mg/m2/1hrの投与量でCDDPの投与が続行された。12週のregimen終了後の治療には規制を設けなかった。Primary endpointは奏効率であり,secondary endpointは奏効期間,無増悪期間,生存期間,有害事象発生頻度,治療完遂率,QOL,PSとした。
症例集積期間は2000年5月から2003年4月までで,27施設からA群77例,B群78例,合計155例が登録され,うち152例が適格とされた。奏効率についてはA群25.3%,B群11.7%で,有意にA群が高かった(P=0.037)。しかし,生存期間については中央値でA群が479日,B群が491日であり,両者に有意差を認めなかった。また,奏効期間および無増悪期間のいずれもA群とB群の間に有意差を認めなかった。有害事象発生頻度は,A群においてB群より白血球減少,好中球減少,貧血,嘔気が有意に高かった。しかし,A群においてもgrade 3以上の有害事象は少なく,grade 3で頻度が比較的高いものでも,好中球減少が8.1%,貧血が6.8%,食欲不振が4.1%,嘔気が4.1%であった。A群のgrade 4の有害事象は血小板減少,BUNおよび食欲不振で各1例(頻度は1.4%)のみであった。12週間の治療を完遂できたものはA群で78.7%,B群で71.4%であり,有意差はなかった(P=0.351)。2群間で有意差が見られたQOLの指標は,ランダム割付けから4週目における治療継続の意志のみであった。これはA群においてB群より低かったが,8週目と12週目では有意差はみられなくなった。A群,B群ともに12週間の治療期間のQOLは高く保たれていた。PSの治療中の変化については両群に有意差を認めなかった。
大腸がんに対する5-FU持続静注に低用量CDDPを併用することで奏効率は有意に高まった。有害事象は5-FU持続静注単独に比べて若干多くなったが,臨床的に許容できる程度であり,QOLも保たれた。12週間という投与条件では生存期間の延長は認められなかったが,有害事象が少なく長期投与が可能であるので,低用量FP療法の延命効果の評価については長期投与のregimenによる次の研究に委ねられるべきものと考察された。