切除不能・再発進行胃がんに対する少量Cisplatin+TS-1療法(第Ⅰ/Ⅱ相試験)
-少量Cisplatin(週5日投与+TS-1併用療法の第Ⅰ相試験-
研究報告書要旨
本研究は,切除不能・再発進行胃がん症例に対する少量Cisplatin(CDDP)+TS-1療法の安全性を評価し,最大耐量(MTD)と投与量規制毒性(DLT)を明らかにし,さらにその有効性を評価し,CDDPの推奨用量(RD)を求めることを目的とした第Ⅰ相試験である。
TS-1の投与量は一定とし40mg/m2×2回/日,連日4週経口投与,2週休薬を1コースとした。同時にCDDPを週5回(第1日~第5日)4週静注投与,2週休薬した。CDDP投与量を1mg/m2/日(レベル1)からはじめ,レベル2,3,4,5にはそれぞれ2,3,4,6mg/m2/日を投与した。2コース以上を完遂とし,最高3コース施行した。DLTの定義はgrade 4の血液毒性,grade 3以上の非血液毒性,第1コース中3週以上の休薬とした。各レベル毎に3例施行し,DLTが出現しない場合は次のレベルに進み,全例にDLTが認められた場合はそのレベルをMTDとし,1~2例にDLTが認められた場合はさらに3例追加することとした。この6例中1~2例にDLTが出現した場合は次のレベルに進み,3例以上にDLTが認められた場合,そのレベルをMTDと定義した。毒性はNCI-CTC ver.2により判定した。また,血清中の5-FUとCDDP濃度を測定した。効果判定はWHO基準と胃癌取扱い規約により行った。
症例集積期間は2000年2月から2002年12月で,5施設から24例の登録を得た。レベル1~5はそれぞれ3,6,6,3,6例で,レベル5の1例が脱落例となった。DLTの出現はレベル1~5でそれぞれ0,2,0,0,3例認められ,その内訳を見ると,レベル2は下痢1例と血液毒性1例,レベル5では食欲不振2例と好中球減少1例であった。従ってMTDはレベル5となり,CDDPのRDはレベル4の4mg/m2/日と決定した。血液毒性はCDDPの投与量と関連しなかった。Grade 3以上の血液毒性の中で最も多かったのは好中球減少であった。治療に関連したgrade 3以上の非血液毒性は食欲不振,下痢が主で,全体では4例(17.4%)に発現した。5-FUの血中濃度は各レベル間に有意差はなかった。CDDPの血中濃度はレベルが高くなるにつれ有意に上昇した。投与第26日目において,レベル4で816~995ng/mlであったが,レベル5では1032~1651ng/mlと高値であった。奏効率については評価不能症例を除いてレベル1~5がそれぞれ66.7,25,66.7,100,50%であり,評価可能な20症例では奏効率は60%であった。全症例23例の生存期間中央値は461日であった。
切除不能・再発進行胃がん症例に対する少量CDDP+TS-1療法は好中球減少が高率に発生し,食欲不振などの副作用に注意が必要であるが,重篤なものは少なく,比較的安全に施行出来ると考えられた。RDを参考にして,第Ⅱ相試験に進む必要があると考えられたが,現時点で長期間入院が必要な本治療法による症例追加は実施困難と考えられ,第Ⅰ相試験結果をもって本研究の報告をすることとなった。