がん集学的治療研究財団・理事 公益社団法人地域医療振興協会 執行役員 (シニアアドバイザー) 外山 千也 |
皆さんはSIB(ソーシャル・インパクト・ボンド=社会的貢献投資)と言う言葉をご存知でしょうか? 耳慣れない言葉かも知れませんが、大変興味深いものです。 これは、財政の緊縮政策が続くイギリスで財政難の解決策としてはじまった、民間資金を使って、医療や福祉の行政サービスを行う新しい仕組みです。 具体的には、地方自治体などが契約する財団法人などが、投資家から資金を募り、認知症や糖尿病の予防に向けた取り組みを行い、その効果を判定し、自治体が税金を財団法人などに支出し、法人が投資家に配当するものです。 膨らみ続ける社会保障財政の圧縮に繋げるものですが、あくまで市場原理の利益追求が主眼ではなく、公益性を基本においたものと理解しています。 そして、このSIBが、驚いたことに、我が国でも骨太の方針に載り、塩崎厚生労働大臣も経済財政諮問会議で積極的に発言されました。また日本財団では、一昨年から取り組み、昨年度の実証事業に引き続き、今年度は、財団法人などを対象として案件組成事業の補助事業を実施し、来年度の本格的実施を目指しておられます(本格的に行うには法改正が必要だと思いますが。)。 一方、当財団の市販後の抗がん剤を中心としたがん集学的治療研究の財源は寄付金が主ですが、仮に、個人が寄付しますと、大雑把に言うと、現在約4割弱が所得税の還付として確定申告で戻って来ます。 つまり、寄付をお願いすると言うことは、6割は直接税金としては取らないけど、社会の為に支出をお願いするということになります。これが極めて低調な状態です。 SIBも効果が出なかった場合は、国や自治体からの支出は無くなるので、投資に対するリターンはありませんが、出す側に立ってみれば、今よりは、寄付(投資)意欲は湧くと思いませんか? もし、当財団のような臨床研究事業によって国民の満足度の高い治療法が確立されるのであれば、その価値を金銭に還元する手法は別途、国の方で開発が必要でしょうが、故郷納税のように、使われ方が見えて、社会的意義もあるし、リターンも少しは期待できるといった仕組みは日本でも拡大するような気がしています。 生涯に国民の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬ時代ですが、日本の個人金融資産は1,700兆円、タンス預金は40兆円あるそうです。 一方、SIBとは別に、SRI(ソーシャリー・リスポンシブル・インベストメント=社会的責任投資)と言うジャンルがあり、我が国ではエコファンドなどが知られていますが、こういった、幸福の追求と関連する企業の経済活動は、まだ、欧米に比べると低調です。 そこで、当財団としては、治験で活躍しているCRO(医薬品開発業務受託機関)やSMO(治験施設支援機関)のような企業を実質的な競争相手としていくより、臨床研究事業の一部で、逆に国民が投資しやすい大きな公共的ながん研究テーマを設定し、研究分野で初めてのSIBを研究してみたら面白いのではないかと思いますが、飛躍のしすぎでしょうか? |
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★今まで行われた当財団の臨床試験一覧についてはこちらから(詳細がPDFでご覧いただけます) |
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