がん集学的治療研究財団 理事 カルビー株式会社 代表取締役会長兼CEO 松本 晃 |
アベノミクスは成功するか? 勿論、私の個人的な見解だが、安倍首相の掲げた目標は達成しない。敢えて評価すれば、1990年から続いてきたデフレをかろうじて止めたことは評価するが、インフレ率年2%とかGDP600兆円というのは目標としては悪くないが達成可能な目標とは言い難い。アベノミクス第一弾は三本の柱から成り立つ。前代未聞の金融緩和が第一の柱。危険な第一弾ではあるが金利が為替を左右する今日では有効な手段で、結果それが円安をもたらし、相変わらず輸出頼りの多くの日本企業にとっては神風であった。第二の柱は財政出動。個人消費が長期低迷しているのであるから景気を支えるのは国または地方自治体が金を使わないと不況は避けられないのだからやむを得ない。しかし、この第一と第二の柱は麻薬やカンフル注射と同じように死にそうな患者を一時的に生命維持するためだからいつまでも打ち続ける訳にはいかない。にもかかわらず、日銀と政府はそれを打ち続けているが次第に効果は薄れてきており、遂にマイナス金利まで持ち出したがその効果は精々2~3日しかもたない。アベノミクスの欠陥は第三の柱にある。第三の柱は成長戦略というが、そもそもそれは政府の役目でなく民間の役目の筈だ。しかし、民間がイノベーションを起こし、新規ビジネスを創造しようとすれば第三の柱は規制緩和であった。日本には悪しき労働規制に代表されるような既得権者に守られた岩盤規制が相変わらず多く存在する。世界70か国で既に爆発的に普及しつつあるムーバーなどは日本では未だ10年以上先のことかもしれない。 日本の医療制度の中には世界に誇れる良い制度も多くある。しかしその制度が日本の成長を阻害しているとも同時に言える。また、日本の1,000兆円を超える赤字財政の主因になっているともいえる。「資本主義は中国に学べ!社会主義は日本に学べ!」と今や冗談とは言えない状況は医療において最も顕著だ。 話は変わるが、日本の医療の向上に、特にがん撲滅に向けて多大な貢献をしてきた当財団は今財政的な危機にある。上手なExcuseだと思うが、あのディオバン事件を機にほとんどの製薬会社が有益な研究にお金を出さなくなってしまっている。民間企業には有益とか無益の判断のできない社内警察的な部隊が存在しており、今日のような環境下で社内警察が有益な研究への支出を妨害していると推察している。当財団にとって財政的に苦しい時期がしばらく続くと思われるが、この苦しい時を乗り越えてこそ明るい日本医療の未来に貢献出来ると信じている。 最後にもう44年も前の事になるが、私の社会人生活の最初の日に出会い、今も大切に持ち続けている言葉を紹介したい。 名を成すは毎(ツネ)に窮苦の日に在り、 事の敗るるは多く得意の時に因る |
|
|
||||
|
|||||
|
|||||
★今まで行われた当財団の臨床試験一覧についてはこちらから(詳細がPDFでご覧いただけます) |
|