がん集学的治療研究財団 常務理事 国際医療福祉大学 学長 北島 政樹 |
昨年、難民問題やパリのテロなど国際情勢は混沌とした中でこれらの暗い雰囲気を一掃したのがラグビーワールドカップ2015において南アフリカチームを破った日本チームの活躍である。特に終了間際に劇的逆転トライは日本人のみならず他国の人々に感動を与えたと思われる。ではなぜ、ラグビー弱小国の日本代表チームが3年間でここまで育ったのか。その理由としてエディージョンズという強力なリーダーの存在である。 まず彼が取り組んだのは日本人選手の「マインドセット」を変えた事である。戦前から体力差、スピード感など多くの差があり、しかも自分たちは農耕民族で相手は狩猟民族と訳の分からない言い訳を云っていたという。 そこで日本独特の早いパス回しと体格差を考えた果敢なタックルを練習させ、ブランドのみを追求するのではなく、そのチームの特長を見出し「勝利の方程式」を確立した。すなわち彼は「コーチング」はアートであり、トレーニング法や選手との接し方など緻密にチーム作りを実践してきた。ジョンズ氏の今回の指導力はアカデミアや企業のリーダーには多大な影響を与えたのではないかと考えている。私自身も大学人の一人として「マインドセットを変える」および「勝利の方程式を模索する」は今後の自分にとっても良き指針となった。更に以前から心に刻んでいるスティーブ・ジョブズ氏の"Innovation distinguishes between a leader and a follower."に相通ずるものがあり興味深い。筆者は現在、日本医療開発機構(AMED)で未来医療機器・システム研究開発および橋渡し研究加速プログラム等のプロジェクトにおいてプロジェクトスーパーバイザーや主査を務めているが、常に要求することはアカデミアの優れたシーズを企業と協働して製品化し患者さんの手元に届けることである。即ち、その意図は今までの日本では現存の機器を使用者の要望により改良すること(sustaining innovation)が主流であったが、現在では従来の評価基準ではむしろ性能は低下するが、新しい評価基準では従来の製品よりも優れた特長を持つものを作り出す(disruptive innovation)ことが要求される。組織のリーダーは常に「勝利の方程式」を模索する為にチームの人々の「マインドセット」を時にして変える必要があり、さらに組織のイノベーションに務め、それもdisruptive innovationが前提でなければならない。奇しくも本財団茂木友三郎会長も“企業経営者にとって大切な事はグローバルな視点で考え、確信と差別化を念頭に置き、行動すること。更に市場を創造し、需要を創造する”との重要性を強調されておられる。 |
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