理事長挨拶を更新しました

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理事長:前 原 喜 彦

2017年6月に開催された、がん集学的治療研究財団(当財団)評議員会・理事会におきまして、第4代理事長に選出され当財団の運営を任されることとなりました。私と当財団の関りは昭和62年から平成元年にかけて実施された杉町圭蔵先生を班長とする特定研究8(特8)に、九州地区の班員として参加したことに始まります。特8が進行していた頃には第2代理事長
井口 潔先生のもと、当財団の臨床試験の体制整備が進められ、それぞれの臨床試験を通して当財団の組織が形作られていきました。
 平成14年に佐治重豊先生が第3代理事長に就任され、『患者さんに優しい効率的な癌薬物療法』の確立を目指し、多数の臨床試験が全国展開されました。その成果が今次々と公表され研究に参加した施設のみならず、広く臨床の現場に還元されています。私が研究代表者として実施したJFMC35(ACTS-RC)は、直腸癌治癒切除症例を対象に術後補助化学療法としてのUFTに対するS-1の優越性を検証するものでありましたが、主要評価項目であるRFSでS-1の優越性を証明して、わが国の直腸癌術後補助化学療法に関する新たなエビデンスを世界に発信することができました。また当財団の研究では、生存期間のみを評価するのではなく、QOLや医療経済性、バイオマーカーとの関連や遺伝子多型と有害事象との関連を付随研究として実施している点は、佐治重豊前理事長の大きな功績であります。
 しかしながら、降圧剤に端を発した臨床研究不正事件により、「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」の改正や「臨床研究法」の成立等の規制が強化され、当財団でも新規臨床試験を実施することは数年間難しい状況にありました。それでも、産学連携はイノベーション推進のために重要であり、何より患者さんにより良い医療を提供するためには、臨床試験を実践してゆくことが是非とも必要であると考えています。今こそ当財団が研究者や企業から独立した組織として、適切な臨床試験の実施を通して、わが国の癌治療の発展に貢献し、わが国で創出されたエビデンスが世界の標準治療につながるよう活動してまいります。
 役員、評議員、そして皆様方のご意見をお聞きしながら、当財団が独自性を持ってさらに発展できますよう努力していく所存ですので、御支援、御協力の程何卒宜しくお願い申し上げます。